はじめに

令和7年7月から、厚生労働省は「130万円の壁」問題への対応として、キャリアアップ助成金に新コース 「短時間労働者労働時間延長支援コース」 を新設します。本記事では、社労士監修のもとで、その概要や既存の「106万円の壁」対策との違いを、分かりやすく整理して解説します。


新設コース:短時間労働者労働時間延長支援コース

「130万円の壁」を超える場合は「106万円の壁」と比べて社会保険料負担が大きくなるため、労働時間や賃金増加の要件も厳しめに設定されています。その分、助成額は最大75万円と現行制度(最大50万円)よりも手厚い支援内容です。さらに2年目以降の処遇改善(基本給5%増・昇給・賞与・退職金制度の導入など)も助成対象に含まれます。 労働時間を延ばしたり賃金を上げたりした事業主に、労働者1人あたり 最大75万円(小規模企業の場合) が助成されます。

主な要件と助成額(例)

(※所定労働時間=1週間あたりの労働時間

  • 労働時間を 5時間以上延長 … 50万円
  • 4時間以上5時間未満 + 賃金5%以上増 … 50万円
  • 3時間以上4時間未満 + 賃金10%以上増 … 50万円
  • 2時間以上3時間未満 + 賃金15%以上増 … 50万円

さらに、2年目に基本給5%以上の増額・昇給・賞与・退職金制度の導入、または労働時間をさらに2時間延長した場合も対象です。この場合、追加で25万円が支給され、初年度の50万円と合わせて合計75万円となります。支給人数に制限はありません。


既存コース:社会保険適用時処遇改善コース

「106万円の壁」対策としては「社会保険適用時処遇改善コース」があります。こちらは 最大50万円 が助成されます。

主な要件と助成額(例)

  • 労働時間を 4時間以上延長 … 30万円
  • 3時間以上4時間未満 + 賃金5%以上増 … 30万円
  • 2時間以上3時間未満 + 賃金10%以上増 … 30万円
  • 1時間以上2時間未満 + 賃金15%以上増 … 30万円

※この制度は令和7年度末までの暫定措置です。


対象となる労働者

※ここでいう「従業員」とは、一般的に社会保険の適用判定で用いられる被保険者(健康保険・厚生年金の加入対象となる雇用保険被保険者数)を指します。

新コースの対象は、次のような短時間労働者を雇う事業主です:

  1. 従業員50人超の会社で、週20時間未満勤務・年収106~130万円未満の労働者。
  2. 従業員50人以下の会社で、社会保険に未加入の労働者。
    • 労働時間を30時間以上にして社会保険に加入させた場合。
    • 労使合意に基づき「任意特定適用事業所」となり加入させた場合も対象。
  3. 社会保険が適用されていない個人事業所などで、労使合意により「任意適用事業所」として加入させた場合。

厚労省の試算では、対象労働者は全国で 約41万人 にのぼるとされています。


社会保険適用促進手当との違い

「106万円の壁」対策では「社会保険適用促進手当」が使えますが、 130万円の壁対策では使えません。 理由は、130万円を超えるには標準報酬月額が11万円以上必要であり、同手当の対象(10.4万円以下)から外れるためです。


まとめ

  • 新コース:「短時間労働者労働時間延長支援コース」 … 最大75万円。
  • 既存コース:「社会保険適用時処遇改善コース」 … 最大50万円。
  • 対象:106〜130万円未満の短時間労働者や、未加入事業所の労働者など。
  • 違い:「130万円の壁」には社会保険適用促進手当が使えない。

最後に

今回の新制度は、短時間労働者の『働き損』を防ぎつつキャリアアップを後押しする仕組みです。事業主にとっては、助成金と基礎控除拡大を追い風に、パートタイマーの週所定労働時間拡大によって人材確保・定着や人手不足解消を進める絶好の機会といえるでしょう。

社労士によるご相談受付中

助成金制度の活用や就業規則の見直し、社会保険の適用判断について不安がある事業主様は、ぜひ当事務所にご相談ください。実務に精通した社会保険労務士が、最適なプランをご提案いたします。お気軽にご相談ください。興味のある方は、下のフォームから気軽にご連絡ください。

    ご相談は無料です。お気軽にご相談ください。

    ※こちらのフォームで得た情報を許可なく第三者に提供することはありません。

    通常1〜3営業日以内に担当者よりご連絡いたします。

    必須
    お名前

    必須
    メールアドレス

    電話番号 (任意)

    ご相談内容 (任意)